落ち着きのない、多動のある子へのアプローチ法 5

 

5.「待つ」ことができるようにする運動

 

落ち着きのない子・多動のある子どもたちに

親や援助をする人たちがもっとも望んでいることが「静止動作」、

つまり「止まる」という運動です。

そして、このような子どもたちにとって「静止」するには、

高度なコントロールが必要です。

 

いつも動いている子どもたちの中には、

自分の身体が止められることすら知らない子どもがいます。

まずは、身体が止まっている状態を体験させることが必要な場合もあります。

 

動きを抑えると大暴れする子どももいます。

しかしそれは「自分の意思」ではなく

「身体の生理的な興奮状態」の表れと考えています。

大人の都合ではなく、

子ども自身のために自分の身体をコントロールできるように、

動きを止めることができるようにしてあげたいと思います。

 

ただし、子どもはもともと長時間じっとできるわけではありません。

まず、5秒。10秒、30秒、1分と少しずつ静止する時間をのばしていきましょう。

時間がのびるにしたがい、自信がつき、集中力や持続力もついてきます。

 

 

 

 

 

「寝かせ静止運動」

 

子どもを仰向けに寝かせ、動いてしまう手や足の動きを伝え、

その動きを子ども自身で止める練習です。

 

なかなか寝ない子どもや指示が通りにくい子どもの場合は、2人の介助者が必要です。

一人の介助者の場合、子どもの頭の方に座り、

手や足が動いたときに動いたところを素早くタッチして教え、

動かさないように伝えます。

 

この運動のとき、身体に力を入れ、

ガチガチに緊張させて動かないようにしている場合には、

前述でお伝えした「緊張を緩め、リラックスする」練習も併用しましょう。

身体に力を入れて止めているとすぐに疲れ、

また動きやすくなって身体の動きを止めることができなくなります。

できたという体験を重ねるためにも、

リラックスすることで身体の動きを止めることができる

ことを教えましょう。

 

 

 

 

 

 

 

「待つ」運動

 

 

運動と運動の間や活動と活動の間に

「待つ」ことも大切な運動の一つです。

落ち着きのない子、多動のある子どもにとって「重要」で「根気」のいることです。

みんなで活動してるときには無難にできていても、

待てないことで集団から外れてしまうこともあります。

 

「待つ」ための訓練として

まずは、子どもの居場所をクッションやリングをおいて明確にしましょう。

それを目印に座らせると、自分の居場所がわかり落ち着きやすくなります。

そして大事なポイントは、

立ち上がろうとする、動き出そうとするときに

肩や身体に触れ、動き出すタイミングを抑えることです。

立ち上がらせたり、動き出してしまってからでは

援助者も子どもも負担が大きくなります。

また、立って待つのが一番ふらつきやすい姿勢です。

どうしても動く場合には、しっかり抱きかかえることをお勧めします。

じっとしていられたら軽く抱き、動き始めようとしたら強く抱きかかえます。

腕の力を緩める時間が長くなれば、子どもの努力を認めることができます。

 

また、わざと不安定なところに座らせたり、立たせたりすると

姿勢を維持することに集中し、余計な動きを止めることができます。

一本足の椅子や平均台、小さく折った紙の上、バランスボールなど

不安定な場所や限られたスペースに立たせて、待たせます。

バランスボールは、バランス良くする道具だけでなく、

「静止」の器具になることも考えておきましょう。

もちろん安全には注意しましょう。

 

 

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