『神経多様性』(Neurodiversity) の広がり

 

毎年、9月にセミナーを行なっています。

 

今年のテーマは「神経多様性」の考えと 実践的アプローチについてお話をしました。

 

『神経多様性』とは、 これまで主流だった「医学モデル」に対し、

 

「社会モデル」本人の特性と社会の仕組みのミスマッチによって

 

障害が生まれるとする考え方に基づいています。

 

 

 

社会の多様な脳の特性として活かす考え方や取り組みが普及し始めています。

 

これは、自然界に多様な動植物が必要なように、

 

人間社会にも異なる認知特性(思考パターン)が必要である

 

という視点から始まり ICT(デジタルツール)の発達により、

 

合理的配慮の標準化も進みました。

 

 

では、なぜ今、世界中でこの考え方が注目されているのでしょう。

 

大きく2つあります。

 

①企業のイノベーション戦略

 

グローバル企業や屋内の大手企業などでは、

 

「ニューロダイバーシティマネジメント」が導入されています。

 

「みんなと同じことができる人」を集めるよりも

 

特定の分野に突出した才能を持つ人をチームに入れる方が

 

企業の競争力が高まるためです。

 

 

②テクノロジー(合理的配慮)の進化

 

かつては「読み書きが苦手」「じっと座っていられない」ことは

 

問題となっていました。

 

しかし現在では、音声入力・AIによる文章校正、タスク管理アプリや

 

リモートワークなどの環境が苦手をカバーしてくれます。

 

その結果、強みを仕事に活かせる環境が整ってきました。

 

 

しかし、注意点も必要です。

 

「ロマン主義」に偏りすぎないようにしましょう。

 

「みんな素晴らしい才能が眠っている」「どんな仕事もできるようになる」と

 

思いすぎたり、強調しすぎると、日常生活で本当に悩んでいる本人や保護者が

 

「そんなことは考えれらない」と傷つく原因にもなります。

 

「困りごと」(ニーズ)への対処は大前提です。

 

「強みを活かす」ことと「生きづらさへのサポート」は両輪です。

 

「本人の脳の特性に合った環境や道具(PCやツール)があれば、

 

こんなに輝くこともある」というスタンスでしょう。

 

最後に、ICTツールを紹介しておきましょう。

 

発達障害のある子どもの「苦手(凹)」を補い、「強み(凸)」を

伸ばすために欠かせないICT ツールとソフトウェアを、カテゴリ別で紹介します。

「本人の努力不足を甘やかす道具ではなく、

視力の低い人がメガネをかけるのと同じ『合理的配慮』の道具である」と考えます。

使用させることが前提ではありません。

 

①「読み書き」の苦手を補うツール(主にLD/SLD・ASD向け)

文字を読むこと(ディスレクシア)や、ノートをとることが苦手な人を

劇的にサポートするツールです。

・音声読み上げ機能(Text-to-Speech)

ツールの例:iOS/Androidの標準機能、Wordの「音声読み上げ」

できること:教科書やプリントのテキストを耳で聞いて理解できます。

 

・音声入力機能(Dictation)

ツールの例:Googleドキュメントの音声入力、スマホの音声認識

できること:頭の中で書きたい文章が決まっていても「文字が書けない」

子どもが、話すだけで作文やリポートを作成できます。

 

・UDデジタル教科書体(フォント)

ツールの例:Windowsに標準搭載、パワーポイントなどで使用可能

できること:文字の形が分かりやすく、見間違い(「さ」と「き」など)を

防ぐために開発されたフォントです。

プリントやスライドに使うと一気に読みやすくなります。

 

・デジタルノート(Notion / OneNote)

ツールの例:Microsoft OneNote、Notion

できること:手書き、タイピング、写真(黒板の撮影)、録音を

すべて1箇所にまとめられます。

検索機能で「あの時のノート」がすぐに見つかります。

 

②「不注意・時間管理」をサポートするツール(主にADHD向け)

時間の感覚をつかむのが苦手だったり、

やるべきことを忘れてしまったりする人のためのツールです。

・視覚的タイマー

ツールの例:Time Timer(タイムタイマー)のアプリ版、TimeBlocks

できること:時間が「色」で減っていくため、「あとどれくらい時間があるか」が

直感的にわかります。

 

・リマインダー・タスク管理アプリ

ツールの例:たすくくま、Todoist、Google Keep

できること:ルーティン(朝の支度など)を手順通りに読み上げてくれたり、

時間になったらアラームで教えてくれたりします。

ツールの例:スマートウォッチなど

できること:音ではなく「腕への振動(バイブレーション)」で

予定を通知してくれるため、授業中やオフィスでも

周囲に迷惑をかけずに次の行動に移れます。

 

③「思考の整理・アイデア出し」を助けるツール(ASD/ADHD向け)

頭の中のアイデアが散らかってしまったり、

文章の構成が組み立てられなかったりする人のためのツールです。

・マインドマッピングツール

ツールの例:MindMeister、XMind

できること:中央のテーマからクモの巣のようにアイデアを広げて視覚化します。

ADHDのひらめきを整理したり、ASDの論理的思考を

組み立てたりするのに最適です。

・生成AIツール(対話型AI)

ツールの例:ChatGPTなど
できること:抽象的な指示(「明日までにこれやって」)を

具体化(「ステップ1:〇〇する」)してもらったり、

文章の校正や、自分の特性に合わせたスケジュールの作成を

壁打ち相手として手伝ってもらえます。

 

④「感覚過敏」を和らげるハードウェア(ASD/ADHD向け)

音や光の刺激が強すぎて、学校や職場で疲弊してしまうのを防ぐ「環境調整」のツールです。

・ノイズキャンセリング機能付きイヤホン / デジタル耳栓

ツールの例:AirPods Pro、Loop(ループ)

できること:周囲の雑音(エアコンの音、他人の話し声、タイピング音)だけを消し、

先生や上司の指示の声は通す設定ができます。

 

・画面のカラーフィルター

ツールの例:PCやスマホの「夜間モード」「アクセシビリティ(色反転)」

できること:白い画面の眩しさで目が疲れる(視覚過敏)のを、

背景を黒くしたり黄色っぽくしたりして軽減します。

 

 

これからもたくさんのツールが開発されるでしょう。
うまく活用していきましょう。

 

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