事例「聴覚過敏」

~集中力がない中2の男の子

 

 

「指導できない子どもがいる」

今から30年ほど前、発達障害という言葉もなかった時代のお話です。

「指導が通じない子どもがいる」

と塾の先生から相談の電話がありました。

話を聞いてみると

「とにかく集中できない。顔が上がって問題に取り組めない。」

とのことでした。

 

そこでこれまでの指導法を聞いてみると

「子どもが顔をあげたら、集中しなさい、と声をかけた」

「集中できないので、自分(先生)のそばに座らせて

顔をあげるたびに、集中しなさいと声をかけた」

「難しい問題だと集中できないのかと思い、

簡単な問題に取り組ませたが1分も集中できていない」

「それでもできないので、一問一問指差したり、

一緒に問題を呼んだりしながら指導した」

 

「3ヶ月ほど側について指導してきたが変化しない。集中しない。」

「もう、どうしていいかわからない」という相談です。

 

 

 

先生のこの子の集中しない原因は

「勉強が嫌いだから」  「集中力がないから」  という結論でした。

 

集中しないのは、

子どもの心の問題」だと考えていたのです。

 

そこで、子どもを観察してみました。

すると、「子どもの声」や

「先生と子どもの会話」 「入室時の音」 「パトカーなどのサイレン」

が聞こえるときに顔をあげることに気づきました。

しかも、その子から遠く離れた場所に座っている子の会話にも反応し、

会話に入っていきます。

 

実際には聞こえるか聞こえないかの小さな声・会話に反応しているのです。

 

聴覚がものすごく敏感な子だからこそ

集中が切れていたのでしょう。

 

そこで、

ヘッドホンをさせ、好きな音楽を聴きながら学習をする 

ことを提案しました。

 

その子が選んだのは「ブルーハーツ」 ロックです。

30年ほど前のことですから、先生は「音楽を聴きながら勉強させるんですか!」

と驚きより反発の感じのこもった感じで聞き返されました。

 

それでもお願いをし、

1ヶ月後また子どもの様子を見る約束をして帰りました。

 

数日後先生より

「勉強するんです!」 「しかも、手際良く仕上げています!」

と連絡がありました。

 

やはり子どもの集中力が切れる原因は 「聴覚の過敏」にあったのです。

たくさんの音が聞こえ、

その音や会話を処理する、無視することができなかったのです。

 

 

次に、先生へお願いしたのは

 

学習する際には、全てを音読しながら学習する

ことです。

 

集中力が高まってくると、今まで必要だった音楽が邪魔になるときが来ます。

その際に、この子が周囲の音に惑わされないためには

自分の声をしっかり聞きながら作業をさせる」こと、

 

つまり

音読しながら学習する」ことをお勧めしました。

 

正しく音読するには、

視線を外さず正しく文字を読まなけれなりません。

答えを書く際も声に出しながら解答します。

このように、

自分の声に注意させることによって、
聴覚の過敏を出さないようにしよう

という指導です。

 

この中2の男の子は

「聴覚過敏」により集中力が切れていたのです。

「集中力がないのは、子どもが学習に向いていないから」ではなく、

集中できない原因を調べる。

 

「心」 「練習量」 「課題の難易」
「感覚器官(視覚・聴覚・触覚など)の働き:など、

 

想像できる原因をひとつずつ確認をして、

その子どもにあった援助をすることが大切です。

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