発達障がいの子どもは
「遅れている」のではなく「凸凹が大きい」
発達障がいのある子どもは、
定型発達の子どもと比べて
「遅れている」
と見られることがあります。

しかし実際には、発達全体が遅れているのではなく、
「得意なこと」と「苦手なこと」の差が
大きい場合が少なくありません。
そのため、苦手な部分ばかりに
焦点を当て続けると、子どもは自信を失い、
学ぶ意欲も低下しやすくなります。
なぜ苦手なことばかり練習しても伸びにくいのか
苦手なことは、子どもにとって大きなエネルギーを必要とします。
例えば処理速度が低い子どもは、
問題を理解していても、
考えることや書くことに人一倍時間がかかります。
その状態で苦手な課題だけを繰り返すと、
「疲れる」
「できない」
「また失敗した」
という体験が積み重なりやすくなります。
一方、得意なことや好きなことに取り組んでいるときは、
集中力が高まり、脳も効率よく働きます。
その結果、必要な力を伸ばしやすくなるのです。

得意な力を土台にする
以前支援した小学5年生のA君は、
中学受験を希望していました。
算数は苦手でした。
解き方そのものは理解しているものの、
処理速度が遅く、
二桁の割り算3問に10分ほどかかっていました。
一方で、社会科には強い興味があり、
高い集中力を発揮していました。
そこで、苦手な算数をひたすら練習するのではなく、
まず社会科を活用して
集中力や処理速度を高める支援を行いました。
またA君は、言語能力が高いので、
頭の中で一つひとつを言葉に変換して考えて確かめる傾向があり、
その分、反応や動作に時間がかかっていました。
そのため、フラッシュカードを用いて、
「見てすぐ答える」練習も行いました。
これは、言葉を介しすぎず、
視覚情報を瞬時に処理する力を高める訓練です。
視覚情報は脳の中でも比較的速く処理されるため、
まず視覚的な処理速度を高め、
その後に聴覚情報や手を動かす速度へとつなげていきました。
さらに学習は、
「好きな科目 → 苦手な科目 → 好きな科目」
という順番で組み立てました。
最後を好きな科目で終えることで、
「今日もできた」
「勉強は嫌なことばかりじゃない」
という感覚を残し、学習への意欲を維持したのです。
受験では、4時間近く座り続け、
集中しながら問題を解き続ける力が必要になります。
そのため、最終的には読むスピード、
手を動かす処理速度を上げることが重要で、
それを支えるのが脳の処理速度です。
最初に視覚情報を鍛え、
次に聴覚情報、
そして最後に手を動かすスピードを高める
という順番で訓練をしました。
そのためには、学力だけでなく、
集中力、処理速度、手際の良さ、座り続ける体力など、
さまざまな力が必要です。
結果として苦手な部分も伸びる
こうした段階的なトレーニングによって、
半年程でA君は割り算にかかる時間が
半分程度まで短縮され、
10分も座っていられなかった状態から、
1〜2時間集中して学習できるようになりました。
そして受験にも無事合格することができました。
この事例が示しているのは、
「苦手を直接矯正すること」
が最善とは限らないということです。
家庭でできる3つの工夫
① 好きなことを学習に取り入れる
電車が好きなら計算問題を電車で作る。
歴史が好きなら文章読解の題材を歴史にする。
子どもの興味を活かすだけで、集中力は大きく変わります。
② 「できないこと」より「できたこと」を伝える
苦手な部分は目につきやすいものです。
しかし、毎日少しでもできたことを見つけて伝えることで、子どもの自己効力感は育ちます。
③ 学習を成功体験で終える
最後に得意な課題や好きな活動を入れることで、
「今日も頑張れた」
という感覚で終わることができます。
この積み重ねが継続する力につながります。
支援で大切なこと
発達障がい支援で大切なのは、
子どもの「好き」「得意」を土台にしながら、
必要な力を段階的に育てていくことです。
・定型発達の子に追いつかせること
・苦手なことばかり練習させること.
ではありません。
得意な力が伸びると自信が育ち、
集中力や意欲も高まります。
その結果として、
苦手な部分にも良い変化が広がっていくのです。
子どもを見るときは、「何ができないか」ではなく、
「何が得意か」に目を向けることから始めてみてください。
そこに、その子らしく伸びていくヒントが
隠れていることが少なくありません。